段葛 再整備について

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段葛 再整備について

工期は2014年(平成26年)11月〜2016年(平成28年)3月を予定。
工事期間中は通行できず。

鎌倉を象徴するものの一つ、段葛(だんかずら)の再整備が本年(2014年)11月にも始まる予定となりました。工事は2016年(平成28年)3月頃までを予定しており、その間は通行できなくなります。石積みの崩落や桜の衰弱などが近年の課題となっており、この度、大規模な再整備が開始されることとなりました。

鶴岡八幡宮境内の一部として国指定史跡に指定されている段葛は、約250本の桜並木が約460mに渡って続き、季節には見物客が多く訪れます。桜の根元に植えられた躑躅(ツツジ)もまた、桜の後に鮮やかに咲き、道行く人々を楽しませています。

段葛は源頼朝による鎌倉幕府基盤整備の一つとして、妻政子の安産祈願を兼ねて造られ、室町期の震災や明治時代の横須賀線工事による撤去を経て、由比ケ浜まで続いていたとされる段葛は現在の形となりました。

鶴岡八幡宮によると再整備の目的は以下の3点となっています。

1 参道としての神厳、及び史跡としての風致・遺構等の保全を図る。
2 参拝者及び一般通行車両等の安全確保を図る。
3 参拝者に親しまれる美しい桜並木の景観の恢復(かいふく)・育成を図る。

どれももっともな事、たとえ期間中通行できなくなろうとも特に1については徹底して再整備にあたっていただきたいものです。
具体的には、以下の整備が実施されます。どれも特段の問題はないと思われます。

・ひび割れなどが発生している石積みを補強。
・老朽化した桜を植え替えつつ本数を現在の約250本から約180本に減らす。
・躑躅(ツツジ)を撤去する。
・現在36か所ある開口部を減らす。(8か所、12か所など現在検討中)

段葛。随所にひび割れが発生している石積み。

段葛。随所にひび割れが発生している石積み。



これは夢ともいえる遠い遠いことですが、できれば、源頼朝が造った神仏習合の鶴岡八幡宮寺に戻す再整備も検討されればとつい思ってしまいます。なにしろ、国家神道の純粋な神社となったのは、鶴岡八幡宮の800年を超える長い歴史(現在の地に移されてから)の中で、明治に行われた神仏分離・廃仏毀釈以降のたったの約140年です。「鎌倉」の魅力は取りも直さず、史上の傑物、源頼朝にそのほとんどをおっています。彼の造った姿に戻してもらいたいものです。

神奈川新聞のおかしな報道。「神厳」を「森巌」と書くお粗末ぶり

神奈川新聞の報道は「問題意識を提起するような姿勢」をみせるためでしょう、開口部の減少をやり玉に「住民らからは「不便になる」など困惑の声も上がっている」、などと「問題意識したい姿勢」にかなりのスペースをさいています。その根拠として以下のようなコメントが掲載されています。

「ほぼ毎日、段葛を横切る。横道が減るのは不便」(段葛の西側で働く20代の男性販売員)。
「客がこちら側へ来なくなるかもしれない」(段葛東側にある飲食店の60代の女性従業員)。
「東側へはあまり行かなくなる」(静岡市から観光で訪れた男性(40))。

この記事を書いた記者は鎌倉で育ったり生活したことがないのでしょう。開口部が36か所からもし12か所に減ったとしても、約460mの参道に12か所も開口部があれば何の問題もありません。これで客がこなくなるとしたら、それは違う要因でしょう。「東側へはあまり行かなくなる」というコメントは工事期間中でしょうか? 実際12か所になってもこの方は、常識的に考えて用があれば東側にいくに違いありません。

そもそも、鎌倉に生まれ育って40年以上になりますが、観光客が大挙して開口部から横切っているのをみたことはほとんどありません。地元鎌倉の友人にも聞いてみましたが、神奈川新聞のいう「困惑の声」などなく、「それはしっかり整備しないとね」という意見です。開口部は今が多すぎて危ないというくらいです。

段葛と並行する若宮大路には西側の歩道、段葛、東側の歩道と3つも道があり、かりに開口部が12か所になったとすれば、約450mに12か所も横切る開口部があるあるわけですから、「困惑の声」などと問題提起するのは本末転倒と感じます。

運転者からみた開口部。かなり車に近く、飛び出してきたら即、事故に繋がりますし、ゆっくり出てきてもドキッとします。

運転者からみた開口部。かなり車に近く、飛び出してきたら即、事故に繋がりますし、ゆっくり出てきてもドキッとします。

段葛の開口部。

段葛の開口部。

それ以上に、報道機関が提起しなくてはならないのは、人を惹きつける鎌倉の魅力は源頼朝の造った「鎌倉」であることでしょう。段葛は鎌倉入りした頼朝が、参道にして軍用道路、都市の基盤整備という目的から造ったわけです(都市の基盤整備という目的は、鎌倉が都市化されこのあたりに水がたまるということが要因もあったそうです)。この工事には今もその名が残る名だたる御家人たちも汗水たらして働いたというようなことが『吾妻鏡』にも記録が残ります。それを保全する再整備ですから、「鎌倉」を守る要といえます。36か所の開口部が12か所になる、ことを報道機関が「困惑の声」などと声高に掲載するのはあまりにお粗末なやり口。

さらに、神奈川新聞の同記事では鶴岡八幡宮の「参道としての神巌や史跡の保全」という重要な部分、「神巌」を「森厳」などと誤植するこれまたお粗末ぶりです。これ自体は単なる誤植ですが、この誤植をやってしまう姿勢と本文の「とにかく新聞的に何か問題提起を」という姿勢が似ているように思えてなりません。
その部分を以下に引用しておきます。※訂正される可能性はありますが、2014年10月25日現在は以下の文言です。

「再整備案の背景には、段葛が社殿に向かうための参道で横切るものではないとする信仰上の考えとともに、開口部が横断歩道のない県道の乱横断を助長している実態があるようだ。同宮は再整備の目的に「参道としての森厳や史跡の保全」を挙げている。」(カナロコ 神奈川新聞 2014年9月12日 http://www.kanaloco.jp/article/77531/cms_id/101054