手前にある洋館は茅葺きの日本建築と繋げられ、中から行き来できるようになっています。サンルームのみ白くペンキが塗られているのは戦後米軍に接収されてしまった名残です。
洋館部分は帝国ホテルを設計したフランク・ロイド・ライト風の外観を持ち、幾何学模様が多用されています。中に入ると各部屋に独特の換気口、居間にある両折山戸の金具を使用したドアなど各所に里見弴のこだわりがみられます。
書斎として使っていたという茅葺きの日本建築は、鎌倉の地にありながら京都の職人による線の細い作り、水平に開けた作りに大きな特徴があります。
駆込天井、竿縁天井、舟底天井、網代天井といった具合にすべて違う様式とした天井など、里見弴がこだわりぬいた見所の尽きない鎌倉の邸宅です。
鶴岡八幡宮に隣接する横浜国立大学附属小中学校沿いに、山の方へとまっすぐ歩くと左手に洋館部分が見えてきます。見学は月曜日の11:00~16:00です。
(※初出:『湘南Fine!』湘南海童社を改訂)
ボーダーの入った外壁や大谷石が印象的な外観。全体的に保存状態は良好です。
洋館のロビー。正面のアールがついた内壁や格子窓、階段の手摺に施された幾何学模様、ランプの形状などが独特の雰囲気を醸し出します。
ロビー左手の格子窓。
日本建築家屋や2階へと繋がる階段部分。雰囲気抜群です。
ロビーの照明。
ロビー右手にある居間。
暖炉が印象的です。
当時恐れられていた結核対策でしょうか。各部屋には換気口が備えられています。
居間の調度品。年季の入り具合が建物と相まっています。
居間とロビーを仕切る扉は両折山戸の金具によって前後どちらにも開閉するようになっています。
お手伝いさんの居住する部屋の前に作られたインターフォン的な装置。各部屋で呼び鈴が押されるとその部屋が表示されます。
ドアノブも今のものと違って味わいがあります。
サンルームと繋がる部屋。昔の照明器具は今のものと違い、一つ一つに美しさがあります。格子窓が景色をもりたてます。
サンルームと繋がる部屋は陽光が差し込みます。里見弴も家族とゆっくりしたのでしょう。白く塗られているのは米軍に接収された時に無遠慮に塗られたもの。
部屋の調度品。随所に幾何学模様が施されています。時を経た美しさがあり、いま使っているものを大切に育もうと思わされます。
階段からロビーと居間を見ます。
階段の欄干。
ロビー正面のアーチと支柱にも行き届いた細工が施されています。
大正末期~昭和初期の洋館に特徴的な幾何学模様。
階段を登り真っすぐ進むと日本建築家屋へと続きます。左手の光が差し込んでいる部分はもう日本建築家屋です。手洗いが印象的なデザイン。
左に曲り日本建築家屋へと入ります。
日本建築家屋の見事な景観。里見弴が建てた当時、ここから見えるのは樹々に覆われた鎌倉の谷戸だけでした。
身土不二。日本の土地には日本建築が一番似合います。関東の地、鎌倉にありながらわざわざ京都の職人を呼び寄せて造られました。線の細い美しさ、天井や装飾の細やかさが独自の雰囲気を醸し出します。
すべて違う様式で造られた天井。
これもまた違う様式です。
ガラスの下は開閉式になっています。
日本建築家屋は美しい植え込みを抜けて向かいます。
日本建築家屋は高床式。景観や風通しがよくなります。
最後は洋館部分を庭から見ます。接収した米軍が塗った白いペンキがなければなお抜群でした。