目 次
〈王道〉金沢街道をゆく
足利公方の本拠地、鎌倉最古仏地、竹の寺などをかつて鎌倉を支えた六浦道(金沢街道)沿いに巡ります。
中世都市鎌倉を支えた物流の大動脈、六浦道(現 金沢街道)は朝比奈切通しと鶴岡八幡宮を繋ぎます。中心街の喧噪を離れて静かな浄明寺、十二所の古刹・名所を巡ります。頼朝も信仰を寄せた日本三古天神の荏柄天神社、鎌倉最古の仏地 杉本寺、竹の寺 報国寺、足利氏の菩提寺 浄妙寺など見所豊富です。
- 見所
- 荏柄天神社、杉本寺、報国寺、浄妙寺、明王院
- 道々の名所/寄り道処
- 段葛、鶴岡八幡宮、宝戒寺、筋替橋、頼朝の墓、大倉幕府跡、鎌倉宮、歌ノ橋、犬懸橋、鎌足稲荷社、足利公方邸跡、梶原景時屋敷跡、大慈寺跡、大江広元屋敷跡、光触寺
- 順路
- 鎌倉駅〜荏柄天神社〜杉本寺〜報国寺〜浄妙寺〜明王院
- 各見所間の距離と所要時間の目安
- 鎌倉駅〜荏柄天神社:1.6km/20分
荏柄天神社〜杉本寺:600m/7分
杉本寺〜報国寺:350m/5分
報国寺〜浄妙寺:350m/5分
浄妙寺〜明王院:1km/12分 - バス路線図と時刻表
- 京急バス路線図
「泉水橋」バス停時刻表「鎌倉駅ゆき」
(徒歩/グーグルマップによる)
要港・六浦港と鎌倉を結んだ六浦道、足利氏にゆかりの深い浄明寺地域
かつて鎌倉を支えた要港・六浦港と鎌倉の中心を結んだ六浦道(現在の金沢街道)沿いの名所を歩きます。
往時は塩などを運ぶ人々が多く行き交い、浄妙寺のあたりにはかつて源頼朝に近い血統を持つ名門足利義兼の邸があり、足利尊氏もまたそこに住みました。室町時代には、足利公方邸となりその場所から関八州に陸奥、出羽を加えた広大な地域を治めました。
鎌倉駅〜荏柄天神社
鎌倉駅に着いたら表(東口)を出てまずは最初の目的地である荏柄天神社に向かいます。ルートは3つ、①若宮大路、②小町通り、③小町大路です。おすすめは①の若宮大路。段葛をいくもよし、両側の道を歩くのもよしです。賑やかなのは鶴岡八幡宮に向かって左手の道です。
②の小町通りは買物の荷物やこの後の徒歩を考えると帰りしなにするのがよいと思います。若宮大路も小町通りもかなり歩いたという方は③の小町大路もおすすめ。ニノ鳥居、鎌倉警察署脇の道を入り、日蓮辻説法跡や妙隆寺、土佐坊昌俊邸跡、宝戒寺などの見所があります。
ここでは段葛を歩くルートにそって進めます。鶴岡八幡宮に一番近い三ノ鳥居が見えて来たら信号を渡ってから鳥居前を横切る横大路に沿って右折、真っすぐ歩くと宝戒寺にぶつかり、そこで道なりに左に曲がります。
すぐに信号と筋替橋石碑が見えてきます。六浦道(現 金沢街道)、小町大路、横大路の三つが重なるこの場所にかつて橋がかかっており、筋替橋といわれました(現在は暗渠)。
道なりに金沢街道を進むと岐れ路交差点が見えてきます。ここを左に曲がり遠く正面に鎌倉宮の鳥居をみつつ歩くと荏柄天神社参道が道を横切っていますから左に入り、荏柄天神社に参拝します。
学問の神として知られる荏柄天神社は、鎌倉幕府の鬼門に位置する日本三古天神のひとつ。本殿は1316年に鶴岡八幡宮の旧本殿を1624年に移築したものであり、現在鎌倉に残る唯一の鎌倉時代の建物です。
荏柄天神社〜杉本寺
荏柄天神社を出たら、鎌倉宮の参道を横切る荏柄天神社の参道を真っすぐいけばシンプルに金沢街道に戻れますが、ここはちょっと違う裏道をいきます。神社の階段を降りるとすぐ右手に天満亭という茶店、さらに2本の大木が交差し鳥居のようになっていますから、その前の道を左に曲ります。
鎌倉宮の参道を越えて真っすぐいくと橋があります。この辺りの道は子供の頃から変わらない静かな道です。とにかく車が少ないので歩きやすく橋を越えた右手、民家の板塀がよい雰囲気です。鎌倉市立第2小学校を過ぎると金沢街道に出ます。
左に進み再び金沢街道を歩き鎌倉最古の仏地、杉本寺へ。杉本寺の創建は734年。あの名僧行基が自ら刻んだ十一面観音とともに起こした寺院です。杉本寺の階段を降りると左斜め前に犬懸橋があります。かつてこのあたりに犬懸上杉家の屋敷があったそうです。犬懸橋はちょうど滑川が曲がるところで、なんとなく長閑な場所。子供の頃によく佇んだのを覚えています。
杉本寺〜報国寺
杉本寺を出たら金沢街道をさらに下り、信号を渡って右手の道に入ると報国寺の参道です。竹の寺として名高い報国寺は、梅、紅葉の名所でもあります。大きなサンシュユもあり、3月頃に訪れると鮮やかな黄色の花が咲きます。
報国寺〜浄妙寺
報国寺から浄妙寺はすぐです。信号を渡り右手に少し進むとロータリーのような場があり、そこを左に進めば浄妙寺です。
浄妙寺は室町幕府を開いた足利氏の菩提寺です。開基の足利義兼は源義家(頼朝の曾祖父)の子である義国の孫です。源頼朝の蜂起に合流し鎌倉幕府の実力者となり数々の政変にも家を堅持、ついに鎌倉を倒し室町幕府を打ち立てた足利尊氏を輩出します。境内には尊氏の父、貞氏の墓もあります。
浄妙寺〜明王院
浄妙寺から明王院は少し距離があります。金沢街道を1kmほど下り、左に入ると明王院です。明王院は源氏将軍体制から北条執権政治へと時代が移っていった時代、摂関家から招かれた第4代将軍藤原頼経によって建立されました。
見所追加の要点と帰路
明王院で終える場合は、金沢街道を少し戻り「泉水橋」バス停から乗車すれば鎌倉駅に戻ることができます。
雑誌などで紹介される金沢街道ルートは鎌倉宮を入れることが多いですから鎌倉宮を加えてるのもよいのですが、鎌倉宮は明治の創建であり、中世都市鎌倉にはありませんでしたから、ここは一味変えたものをおすすめします。
おすすめは明王院の先にある光触寺や前述の大江広元屋敷跡、大慈寺跡などです。時宗の光触寺には塩嘗め地蔵があります。かつて鎌倉を支えた六浦港と鎌倉を結んだ六浦道にある光触寺の塩嘗め地蔵は、六浦から塩を運んでいた商人が塩を供えたところ帰りにはなくなっていたという伝説があり、六浦道の歴史を実感することができます。光触寺で引き返す場合は、国道から光触寺へと曲がるあたりの商店近くに十二所バス停があります。
さらに健脚の方は朝比奈切通しがおすすめ。六浦道は六浦港と鎌倉中心部を繋ぐための道路であり、最終的には朝比奈切通しがポイントです。第3代執権北条泰時がこの切通しを開いて以来、鎌倉を支えて来た切通しです。国道から切通しへと向かう道に入るあたりには「十二所神社」バス停があります。
最後は小町通り。明王院を出て泉水橋バス停からバスに乗り小町通りを巡るのもよいと思います。