身延山久遠寺、池上本門寺と並ぶ日蓮宗最古の寺院であり、全国に14ある日蓮ゆかりの霊跡寺院のひとつでもある日蓮宗の重要な寺院です。日蓮上人が池上宗仲邸での臨終の際、枕元に掛かっていたと言われる「臨滅時の御本尊」（日蓮宗の宗定本尊）といわれる十界曼荼羅も妙本寺にあります。

境内は祇園山に面しているため大変静寂であり、敷地も広い。源氏山に面した海蔵寺もそうですが、山に面した寺院というのは静かな鎌倉にあってもより一層静けさを纏っているため、とても落ち着きます。伽藍は二門（総門、二天門）、二堂（本堂、祖師堂）という日蓮宗の伝統的な配置となっています。

総門付近から山が深くなり、一番奥にある鎌倉最大級の木造仏堂建築である祖師堂まで距離があるゆったりした上りになっていますから、しっかり気分を落ち着けることができます。総門をくぐって左手にある方丈門をいくと三宝尊を安置する本堂へと至り、まっすぐいき二天門をくぐると日蓮上人の神霊を祀る祖師堂があります。

なによりも、山に面してこれより奥に人の臭いがない静けさが日蓮宗最古の寺院に大きな魅力を加えています。紅葉の季節などは自然の山が赤くなる深みがある秋が味わえます。女性を巡って争っていた詩人の中原中也と批評家の小林秀雄が妙本寺祖師堂の前で話し合い、和解したというエピソードもあります。比企一族の墓の裏手あたりからは30分ほどで腹切りやぐら付近に出る手軽でいきやすい祇園山ハイキンコースに入ることもできます。

妙本寺のある谷戸は源頼朝に仕えた有力御家人の比企能員（ひきよしかず）一族の屋敷がありました。源氏と親密であった比企一族は、頼朝没後、北条氏と対立し最後はこの地にて滅ぼされました。この時生き残った末子の比企能本（ひきよしもと）は、京都で朝廷に仕えた後、鎌倉に戻って儒学者として活躍し、帰依していた日蓮に屋敷を献呈し妙本寺を開基しました。

妙本寺本堂の左手の階段を登ったところにある墓所には竹御所の墓があります。竹御所は源頼家の子であり源頼朝の血をひく最後の人です。鞠子または媄子（よしこ）といったそうです。妙本寺では媄子としており墓所には源媄子の墓と記されています。竹御所の屋敷もまた妙本寺の地にあったそうです。

源頼家の子として1202年（建仁２年）生まれた竹御所は、父頼家が暗殺された後も生き延び、源頼朝の血をひく唯一の人物として政子の後継者となりました。28歳となった1230年（寛喜２年）、13歳であった第４代将軍藤原頼経に嫁ぎ、４年後に懐妊するも男子を死産し本人も死去した。享年33歳。これにより源頼朝の血筋は完全に断絶し、御家人達の動揺は大きなものであったと伝えられています。

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妙本寺の梅

妙本寺の桜

妙本寺のあじさい

妙本寺の紅葉

妙本寺フォトギャラリー

妙本寺の参道。鎌倉駅から日朝様（本覚寺）を抜けて夷堂橋を渡ると妙本寺門前の雰囲気が出てきます。祖師堂へと続くこの参道の雰囲気が心を落ち着けてくれます。

妙本寺二天門。四天王のうち持国天と多聞天（毘沙門天）を安置しています。持国天は東方、多聞天は北方を守護します。

妙本寺二天門の見事な彫刻。朱色に映えます。四天王のうち持国天と多聞天（毘沙門天）を安置しています。

妙本寺境内と祖師堂。祇園山に囲まれ森々とした素晴らしい場所です。無粋な近代建築や電線、鉄塔などは視界に入りません。

祇園山に抱かれた日蓮宗由緒寺院、妙本寺。

妙本寺にある日蓮上人像。

妙本寺、比企一族の墓。かつてこの地には有力御家人、比企一族の屋敷がありました。

妙本寺本堂。山門と祖師堂の中間あたりに本堂があります。

妙本寺祖師堂脇の石碑には「万葉集研究遺跡」と刻まれています。竹御所の墓がある妙本寺墓地にはかつて新釈迦堂があり、万葉研究で名高い僧、仙覚が研究を行った場所です。

妙本寺、竹御所の墓。祖師堂左脇の石碑近くの階段を登ると墓地があり、正面に竹御所の墓が見えてきます。

妙本寺、竹御所の墓。きれいな樹々に囲まれた竹御所の墓。

妙本寺、竹御所の墓。石碑には「源媄子墓」銘と簡単な説明が刻まれています。

妙本寺、竹御所の墓。墓の静かな佇まいに反して、源頼朝の血をひく最後の人としての存在感は大きかったことでしょう。

妙本寺墓地左手の崖にある佐竹矢倉。1422年（応永29年）、佐竹・上杉合戦に敗れた佐竹常元とその家臣13人がこの矢倉の中で自害しました。

妙本寺祖師堂左手にある寒紅梅。

妙本寺の梅。2014年１月30日。境内に１本だけあるこの寒紅梅のみ見頃です。他の木はまだまだ。

2014年２月５日の妙本寺。この木は、素人蝋梅（ソシンロウバイ）という梅の一種。12月下旬から下向きに黄色の美しい花が咲きます。

妙本寺の桜は日蓮像を慕うようにのびています。

妙本寺二天門のそばに２本の大きな桜があります。

平成28年4月6日、妙本寺の新緑と桜。

妙本寺の海棠（カイドウ）。祖師堂の左に２株、右に１株あります。桜と前後して（概ね少し遅く）咲く海棠は鎌倉ではとても人気があります。

妙本寺の海棠（カイドウ）。祖師堂の左にある２株。そのさらに左には海棠に折り重なるように枝垂桜も咲いています。

妙本寺の海棠（カイドウ）。祖師堂の右にある株。陽当たりのよい左の２株が先に開花します。

妙本寺の（カイドウ）。花の重みで少し枝垂れます。

平成28年4月6日、妙本寺の海棠（カイドウ）。

平成28年4月6日、妙本寺の吉野躑躅（ヨシノツツジ）。

平成28年4月6日、妙本寺の著莪（シャガ）。

平成28年4月6日、妙本寺の緑。

妙本寺のあじさい。比企一族の墓前には霊を弔うかのように咲きます。

妙本寺のあじさい。本堂右手、比企一族の墓の近くにあるヤマアジサイ。野性味があって魅力的です。

妙本寺のあじさい。妙本寺梵鐘への登る階段にさくあじさい。

妙本寺の凌霄花（ノウゼンズラ）。二天門を過ぎると左右に咲きます。

妙本寺の凌霄花（ノウゼンカズラ）。７月に咲き、鎌倉の夏を鮮やかに彩ります。

祖師堂の廊下から紅葉をのぞみと、また違った紅葉が味わえます。

祖師堂の左手にある紅葉です。

妙本寺本堂の側にある梵鐘付近は紅葉の名所です。

妙本寺梵鐘の屋根にかかる紅葉。

妙本寺二天門にかかる紅葉。