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〈あじさい〉鎌倉 あじさい見物 長谷〜稲村

鎌倉、あじさいの王道

鎌倉あじさいの王道といえば海と山、長谷と北鎌倉。その一方の雄、長谷を中心に巡るルートです。あじさいが三浦半島や房総半島の海沿いを原産地とすることを考えると、海に抱かれた長谷や稲村ケ崎のあじさいはその本来の姿ともいえます。江ノ電、長谷寺、御霊神社、成就院、稲村ケ崎を初夏の眩しい光を感じながら歩きます。

長谷寺のあじさいは数だけでなく質も高く、季節の賑わいが頷けます。

長谷寺のあじさいは数だけでなく質も高く、季節の賑わいが頷けます。

見所

長谷寺(あじさい)(基本情報)御霊神社(あじさい)(基本情報)成就院(あじさい)(基本情報)稲村ケ崎海浜公園(あじさい)(基本情報)
道々の名所/寄り道処
光則寺高徳院(大仏)あじさいポスト極楽寺坂切通し星の井寺星ノ井極楽寺日蓮袈裟掛けの松跡十一人塚しらすや
順路

江ノ電「鎌倉駅」〜「長谷駅」〜長谷寺〜御霊神社〜成就院〜稲村ケ崎海浜公園
※成就院〜稲村ケ崎公園を江ノ電の場合「極楽寺駅」乗車、「稲村ケ崎駅」下車
各見所間の距離と所要時間の目安
江ノ電「鎌倉駅」〜「長谷駅」:乗車6分
「長谷駅」〜長谷寺:350m/5分
長谷寺〜御霊神社:500m/6分
御霊神社〜成就院:400m/6分
成就院〜稲村ケ崎海浜公園

鎌倉 あじさい見物 2014 長谷〜稲村 地図

江ノ電「鎌倉駅」〜「長谷駅」

JR「鎌倉駅」に着いたら構内を歩いて直結する江ノ電「鎌倉駅」に向かいます。江ノ電の切符を買い、改札を抜けると空気が長閑に変わるのを感じます。右手には構内売店があり、鳩サブレーの豊島屋、鎌倉ハム、海産物などのフィッシャーマンズワーフ湘南、お土産なども売っている江ノ電グッズショップ、セブン-イレブンなどがあります。エキナカというよりやはり売店と書きたい空気が鎌倉らしい良さと思えます。※2014年頃に売店は改装され、小洒落た雰囲気になってしまい見所はひとつ減りました。大変残念です

「長谷駅」〜長谷寺

海のすぐ側にある長谷駅はあじさいが咲く初夏、爽やかさの残る潮風を感じます。江ノ電を降りて少し歩くと長谷観音前交差点につき、左手に入るとすぐ参道が始まります。長谷寺の参道は小気味良く、子供の頃とは多少変わったところもあるものの、いまでもどこか懐かしい感触を与えてくれます。初めて訪れる方もきっと、いつかどこかで感じた懐かしさを得られることと思います。

参道には明治末期から120年、鈴木家が営む生粋の鎌倉の旅館、對僊閣があります。現在の建物は関東大震災後の昭和2年に建てられたものです。大正末期〜昭和初期の風情をいまに伝える貴重な建物といえます。

あじさいの季節、長谷寺はとても混み合います。何せ2,500株ものあじさいが斜面を埋め尽くし、由比ケ浜も同じ眼中に収められるとあって大変な賑わいです。鎌倉にゆかりの名がつけられたあじさいの新種も見ることができます。

長谷寺は小さな山をそのまま使って造られており、鎌倉の西方極楽浄土とでもいう雰囲気。境内には多くの見所がありますから、ゆっくりと巡ってみましょう。

長谷寺〜御霊神社

長谷寺御霊神社はすぐ近く。長谷寺の参道に「御霊神社近道」の案内板がありますからそれに従って歩けばほどなく到着します。御霊神社のあじさいは江ノ電の線路に沿って植えられており、あじさいをかすめて走る江ノ電の風情が見所です。

御霊神社がこの地にできたのは平安時代後期のこと。源頼朝から遡ること3代、武神と恐れられた源義家に従って奥州の後三年の役を戦った鎌倉権五郎景政を祀っています。鎌倉氏は湘南地域を拓いた一族としてこの地を治め、景政は武士の鏡といわれた人物です。なお、この景政の子孫に源頼朝の鎌倉創成に活躍した梶原景時がいます。

あじさいは日本原産であり、鎌倉や三浦半島、房総半島の海沿いに自生していたもの。平安後期を生きた鎌倉景政もまた、今日の我々と同じようにあじさいを眺めたことでしょう。

ちょっと寄り道
江戸時代から続く力餅家

御霊神社から成就院もまたすぐそこです。長谷寺からきた道ではなく、江ノ電を線路を渡り星の井通りに向かってまっすぐ歩きます。通りに出る少し手前に江戸時代から300年も続く門前の店、力餅家があります。つきたての餅にこしあんを乗せた力餅はいつ食べても美味しく、変わらぬ継続の逞しさを感じます。

朝方店の前を通ると、餅米をつく香りが漂っています。何も添加物のない朝ついた餅は抜群に美味しいのですが、同時に日持ちせずその日に食べるのが基本。本当はこれを食べていただきたいのですが、もしお土産等にて日持ちが必要な場合には牛皮のものも販売されています。

力餅家さんの前にある円柱の昔ながらのポストは、大きなあじさいに包まれるあじさいポストとして街の風物詩になっています。

御霊神社〜成就院

御霊神社から成就院に向かう途中、右手にたくさんの旗が見えます。これは星の井寺(虚空蔵堂)のもの。星の井寺(虚空蔵堂)は天平時代に全国を行脚した名僧行基が鎌倉に創建したお寺の一つであり、日本三虚空蔵に数えられています。階段を登って小さなお堂が一つあるだけですから立ち寄ってみるとよいでしょう。門前には虚空蔵堂の由来ともなったかつての名水、星ノ井があります。

成就院のあじさいの参道は星の井寺(虚空蔵堂)のほんの少し先の右手あたりから入ります。『男はつらいよ』第29作『 寅次郎あじさいの恋』の名場面を思い出す成就院は鎌倉のあじさい寺として知られています。

「鎌倉のあじさい寺で日曜の午後1時、待っています」いしだあゆみからこんな付け文を届けられた寅次郎は喜びつつも、その本気に、甥の満男を連れ出します。坂ノ下から成就院のあじさいの参道を登ってくる寅次郎、上で待ついしだあゆみ。寅次郎をみつけた時の喜びの笑顔は忘れられない名場面のひとつです。昭和57年、初夏の鎌倉、古刹、あじさい、すべての魅力が溶け込み美しい女性の情をスクリーンに映し出します。『駅 STATION』銭函駅での別れのシーンでみせた悲しみの笑顔と相まって脳裏に刻み込まれています。

成就院の参道はいまでも左右をあじさいが埋め尽くし、眼下に由比ケ浜を見下ろす最高のロケーションが多くの見物客を集めます。

成就院〜稲村ケ崎海浜公園

成就院への参拝を終えたら、登って来たあじさいの参道とは反対の階段を降り、かつて西から鎌倉に入る大道として栄え、新田義貞の軍勢が鎌倉方と激しく戦った極楽寺坂を登ります。すぐに極楽寺と極楽寺駅が見えてきます。道なりに静かな鎌倉の道を歩くこと約7分(650m)、右手に江ノ電の線路が開けて来た少し手前を左手の細い道に入ります。すぐに橋を渡り道なりに約7分(550m)ほど歩くと国道134号線稲村ケ崎公園前信号に出ます。歩きながら感じていた海が眼前に広がり、正面に稲村ケ崎海浜公園がみえます。

信号を渡り海浜公園に入ったらまずは右手の海に目を向けてください。近くに江の島、天気に恵まれれば江の島越しに富士を望むことができます。入ってすぐの平場にも数本のあじさいがありますが、メインは階段を登った先にあります。

階段の道々に咲くあじさいをみながら登ると展望台につき、左手の豊かなあじさいがすぐわかります。展望台は階段を登って右手にありますから見逃すことはありませんが、左手の空き地のような場所にも見事なガクアジサイがあります。

朝一番に鎌倉駅を出発して弁当を稲村ケ崎でいただくのもよし、ゆっくり鎌倉に入って稲村ケ崎の夕陽を拝むのも一興です。

寄り道/しらすや

稲村ケ崎海浜公園の後、帰路につく場合は江ノ電「稲村ケ崎駅」から「鎌倉駅」に戻るか、「藤沢駅」に出るかでしょう。江の島見物もついでにというのは少しきついと思います。そこで、海の幸豊富な「しらすや」さんでゆっくり食べるというのはいかがでしょうか。

腰越の網元勘浜水産直営の「しらすや」は腰越にあります。くわしくは「鎌倉グルメ しらすや」コーナーをご覧いただきたいところですが、年2回のしらすの旬は春(3月〜5月)と秋(9月中旬〜11月)ですから、あじさいの季節にはあいませんが、鎌倉の海の幸をあじわうことはできます。

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