目 次

〈紅葉〉鎌倉 紅葉見物 日蓮ゆかりの大町

日蓮ゆかりの寺院と紅葉

名越切通しや祇園山を抱える大町は紅葉の名所が多くあります。また大町は日蓮が鎌倉入りして初めて草庵(松葉ヶ谷草庵)を結んだ場所でもあり、隣り合う材木座地域とともに日蓮ゆかりの寺院・史跡が多くあります。日蓮という鎌倉仏教の巨人をメインテーマに、ハイキングコースも交えて鎌倉の紅葉を巡ります。鎌倉駅から近く、見所は集まっていますから半日程でまわれる行程です。

紅葉の見所

※名称をクリックすると詳細情報が表示されます。

妙本寺妙本寺の紅葉安国論寺長勝寺
道々の名所・寄道処

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大巧寺本覚寺夷堂橋常栄寺(ぼたもち寺)八雲神社上行寺安養院化生窟と御硯水妙法寺銚子ノ井日蓮乞水
ルート
鎌倉駅~妙本寺〜(祇園山ハイキングコース)〜安国論寺〜長勝寺
主な見所間の距離と所要時間(徒歩/グーグルマップによる)
鎌倉駅~妙本寺:550m/7分
妙本寺~(祇園山ハイキングコース)〜安国論寺:900m/40分
安国論寺~長勝寺:450m/5分
長勝寺〜鎌倉駅:1.4km/17分

〈紅葉〉日蓮ゆかりの大町地図

〈紅葉〉日蓮ゆかりの大町地図

鎌倉駅~妙本寺

まずは妙本寺へと向かいます。身延山久遠寺、池上本門寺と並ぶ日蓮宗最古の寺院です。祇園山に抱かれた谷戸に建つ妙本寺は穏やかな森の香りに包まれた心静まる場所でありながら、日蓮宗の宗定本尊である十界曼荼羅を護持するという格式ある寺院です。また、妙本寺は有力御家人比企一族の屋敷跡でもあります。比企能員源頼朝に仕え、奥州合戦では北陸道の大将軍を務めました。しかし、娘の若狭局が第2代将軍源頼家の側室として嫡男一幡を産んだことから、次第に北条氏に敵対視され、滅ぼされてしまいました。
妙本寺の紅葉はある意味では鎌倉一といいたい風情を持っています。それは、鎌倉仏教の巨人、日蓮ゆかりの由緒寺院という深い信仰と800年以上もの歴史、山間の谷戸という鎌倉らしい土地が生み出す独特の静寂が生み出すものだと思います。
樹々に包まれ、緩やかに心地よい上り勾配の参道をゆくと、朱色が鮮やかながら落ち着いた風情の二天門がみえてきます。二天門より前の左手に本堂があり、ここから二天門まで紅葉があります。広い参道に沿って左手にも参道があり、こちらが紅葉スポットです。そしてもう一つは祖師堂左手の池周辺です。祖師堂の回廊から眺める紅葉は格別です。
特に平日の早い時間、もしくは夕方閉門ぎりぎりをおすすめします。少しでも人が少ない時間に訪れ、その風情を満喫していただきたいと思います。

妙本寺~(祇園山ハイキングコース)〜安国論寺

妙本寺祖師堂の左手にある池のあたりにある階段をあがり、池を右にみながら山に入っていくと祇園山ハイキングコースに入るることができます。今回は秋らしさを満喫できるハイキングコースを交えて安国論寺に向かいます。一般道をいきたい方は妙本寺の上ってきた参道を下り、山門左手の細い道を進んでください。
祇園山ハイキングコースと八雲神社
祇園山ハイキングコースは鎌倉でも最も手軽なハイキングコースです小町と大町を隔てる尾根沿いに続いています。東勝寺跡から八雲神社まで全長は約3.3km程、すべて歩くと1時間と少しです。今回は途中の妙本寺から八雲神社ですから距離的には約半分、40分程です。
祇園山ハイキングコースを降りてくると、八雲神社に出てきます。八雲神社は牛頭天王(ごずてんのう)を祀る祇園信仰の神社として源頼朝の鎌倉入り以前からこの地にある社です。永保年間(1081〜1083年)に奥州へと向かう途中の新羅三郎(源)義光が、この地に疫病が蔓延しているのをみて勧請したといわれています。永い間、祇園天王社でしたが明治の廃仏毀釈により八雲神社と名称が変更されてしまいました。
八雲神社参拝を終えたら左に進むと大町四つ角の近くに出ます。左折し、右手に上行寺、左手に安養院などをみながら歩くと道が二股に分かれ「安国論寺こちら」の案内板があります。それに沿って左の道を行くとすぐに安国論寺がみえてきます。
安国論寺
比叡山、高野山、東寺など名だたる名刹で修行した日蓮は生国の安房(千葉県)において悟りを開き、立教開宗します。布教のため鎌倉を目指した日蓮は現在の逗子から名越を越えて鎌倉へと入り、現在の大町に最初の草庵である松葉ヶ谷草庵を結びました。その場所であるといわれているのは、現在の安国論寺妙法寺長勝寺の3か所です。
安国論寺は松葉ヶ谷草庵跡であり、その名のとおり日蓮が『立正安国論』を著した場所でもあります。松葉ヶ谷草庵が焼き討ちにあった際に日蓮が一時的に避難したという洞窟も境内に残っています。日蓮という巨人の闘いの跡を訪れるわけですが、安国論寺はとても静かで穏やかです。
安国論寺の紅葉は山門を入ってすぐ、ハイライトです。山門から本堂へと真っすぐに続く境内は秋に満たされているといった雰囲気です。すぐ右上が急峻な小高い山になっているため包まれた感じになるのです。山からの落ち葉も秋らしさをすすめます。境内奥には日蓮六老僧の一人である日朗の荼毘所や、富士見台などもありますからお見逃しなく。

安国論寺~長勝寺

長勝寺は松葉ヶ谷草庵跡といわれていますが観光というより祈りの場所です。以前ある雑誌への掲載をお願いしたところ、「観光のお寺ではないのでできれば遠慮したいです」といわれました。筆者が地元のお寺として子供の頃から親しんでいることを伝え、「美しい桜や紅葉を日蓮さんの歴史とともに真面目に紹介したい」とお願いした了承いただいたことがあります。
この控えめなところが長勝寺の魅力。日蓮像や四天王像はとても立派であり法華堂付近の紅葉は法華堂の濃い木の色合いとの相性がよくとてもきれいです。

帰路、もしくは追加の見所

長勝寺参拝を終えて、まだ時間も体力にも余裕がある方もいらっしゃるでしょうから、追加の名所をご案内します。
八雲神社から安国論寺へと向かう道にみた日蓮宗の上行寺、北条政子ゆかりの安養院はおすすめです。さらに、安国論寺の近くには妙法寺があります。
恐らく安国論寺山門前で気づかれたことと思いますが、山門前左手に妙法寺案内の石碑があります。その道を進むと妙法寺があります。松葉ヶ谷草庵跡といわれる3か所のうちの一つであり、徳川御三家や肥後細川家の崇敬と庇護を受け、護良親王の子である日叡が中興開山しました。苔寺としても知られ、その苔むした階段と周囲の森は歴史と信仰の静謐をたたえています。
妙本寺近くにはぼたもち寺として知られる常栄寺があります。日蓮が処刑寸前の憂き目に遭った龍ノ口法難の時、幕府の役人によって刑場へと引き回される日蓮に対してこの地に住していた桟敷の尼が最後の奉公をとぼたもちを差し出しました。日蓮は処刑寸前に奇跡によって処刑を免れます。この奇跡は一人の尼の信心がもたらしたものであるとして現在までぼたもち寺と呼ばれ親しまれています。
さらに夷堂橋を挟んで妙本寺と反対側には本覚寺があります。春の枝垂桜、初夏のあじさい、盛夏のサルスベリはとても見事です。日蓮宗の総本山身延山久遠寺から関東の信者のために分骨された日蓮の遺骨を安置する御分骨堂を持つ由緒ある寺院であり、えびす祭りの賑わいは地元の風物詩でもあります。