桜が終わり、鎌倉まつりあたり、4月中旬〜5月の鎌倉。寒さから完全に開放され、夏の気配を強く感じる5月の鎌倉は散策やハイキングに最適な季節です。ゴールデンウィークを過ぎると、あじさいの咲く梅雨入りまで落ち着いた雰囲気になります。※写真のギャラリーは下の方にあります。
鎌倉、5月の花木
桜、海棠が終わり、鎌倉まつりが過ぎた鎌倉は一息ついてゴールデンウィークに向かいます。桜が終わりと、あじさいの始まりに挟まれた鎌倉は藤(フジ)、躑躅(ツツジ)、牡丹が咲き誇り、暖かさに包まれ夏の気配が漂ってきます。
桜の後、4月中旬〜5月の主な花木は躑躅(ツツジ)、牡丹(ボタン)、藤(フジ)や杜若(カキツバタ)、そして薔薇(バラ)などです。
4月の上旬からわずかに赤みを帯びた鮮やかな山吹の黄色がみられ、吉野躑躅(ヨシノツツジ)や三葉躑躅(ミツバツツジ)が咲き始めたら、中旬以降、ゴールデンウィーク頃に安養院や仏行寺の普通の躑躅(ツツジ)、鎌倉文学館の躑躅が豪華に咲きます。ひっそりと咲く石楠花(シャクナゲ)も見逃せません。
4月下旬〜5月上旬にかけて藤(フジ)や牡丹(ボタン)が見頃を迎え、道々に咲く白い著莪(シャガ)も毎年楽しみにしている花の一つ。藤は鶴岡八幡宮、鎌倉宮、長谷寺などの藤棚が有名ですが、注意して歩いているとハイキングコースなどの山中にも自生しています。
4月下旬から鶴岡八幡宮の神苑牡丹園が春の見頃を迎え、5月中旬まで見られます。他にも、長谷寺や浄妙寺、光則寺、円覚寺などでも見られます。
入れ替わるようにして5月中旬からは薔薇(バラ)や杜若(カキツバタ)が咲き、朝比奈切通しなど山中の空木(ウツギ)も慎ましい白が爽やかです。下旬になると光明寺や報国寺の皐月(サツキ)が見頃を迎えます。皐月(サツキ)が終わると6月10日頃にはいよいよ梅雨入り。あじさいが咲き始めます。
春の鎌倉、古道ハイキング
鎌倉は小さな山に三方を囲まれています。開発が進んでいるのは悲しい限りですがまだまだ自然豊かな古道が残っています。おすすめは、名越切通し、朝比奈切通し、天園ハイキングコース、葛原岡・大仏ハイキングコースあたり。
鎌倉と逗子を繋ぐ名越切通しは13世紀前半に造られた古道。往時の姿をとどめる貴重な史跡であり、大切岸やまんだら堂(期間限定公開)などの史跡を包含しています。いかにも切通しという森々とした景観、鎌倉の海を望む展望もあり、5つ以上の出入口を持つ広いコースです。
※名越切通しについて詳しくはこちら。
朝比奈切通しは鎌倉の十二所と横浜の金沢を繋ぎ、鎌倉を支えた要港である金沢港と鎌倉をつないだ中世の要道です。いまでも当時の風情を残した素晴らしい古道。鎌倉を代表する河川、滑川の源流でありきれいな水が沢を流れる様には癒されます。
※朝比奈切通しについて詳しくはこちら。
天園ハイキングコースは、鶴岡八幡宮の後方に広がり、北鎌倉方面と瑞泉寺付近を繋ぎます。鎌倉最高点の大平山(159.2m)を持ち、十王岩、百八やぐら群、獅子舞など見所も豊富。山中にゴルフクラブがありこれだけが残念ではありますが、その他は無粋な近代建築を見ずに過ごせます。茶屋が2件あるのもよしです。
※天園ハイキングコースについて詳しくはこちら。
葛原岡・大仏ハイキングコースは、北鎌倉の浄智寺裏から源氏山を抜けて長谷の大仏を繋ぎます。北鎌倉からいくと大仏に出る少し前で大仏切通しに入ることができ、火の見下に出られます。
※葛原岡・大仏ハイキングコースついて詳しくはこちら。
主な5月の花木
石楠花〔シャクナゲ/4月〜5月〕長谷寺、海蔵寺、安国論寺
躑躅 〔ツツジ/4月中旬~5月上旬〕鶴岡八幡宮、段葛、瑞泉寺、安養院、宝戒寺、鎌倉文学館、仏行寺、浄妙寺、報国寺、海蔵寺、安国論寺、高徳院
十二単〔ジュウニヒトエ/4月中旬~5月初旬〕長谷寺、東慶寺
著莪 〔シャガ/4月下旬〜5月上旬〕海蔵寺、建長寺、明月院、佐助稲荷神社、妙本寺
藤 〔フジ/4月下旬~5月上旬〕鶴岡八幡宮、鎌倉宮、瑞泉寺、浄妙寺、光則寺、長谷寺
牡丹 〔ボタン/4月下旬~5月上旬〕鶴岡八幡宮、浄妙寺、長谷寺、光則寺、円覚寺、東慶寺、浄智寺
山吹 〔ヤマブキ/4月上旬〜5月〕海蔵寺、安国論寺、円覚寺
小手毬〔コデマリ/4月〜5月〕浄妙寺、長谷寺、海蔵寺
白雲木 〔ハクウンボク/5月上旬〜6月上旬〕浄智寺、極楽寺
空木(卯木) 〔ウツギ/5月中旬〜6月上旬〕海蔵寺、朝比奈切通し、光触寺、安国論寺
杜若 〔カキツバタ/5月中旬〜6月上旬〕海蔵寺、光触寺
葉蘇 〔アカンサス/5月下旬〜6月中旬〕長谷寺
薔薇 〔バラ/5月中旬~6月下旬〕鎌倉文学館
金糸梅〔キンシバイ/5月下旬〜6月中旬〕瑞泉寺、長谷寺
皐月 〔サツキ/5月下旬〜6月上旬〕光明寺、海蔵寺、建長寺、浄智寺、報国寺
雪下 〔ユキノシタ/5月下旬〜6月上旬〕光明寺、浄智寺
小葉立浪〔コバノタツナミ/5月下旬〜6月上旬〕長谷寺、十二所神社
主な古道(自然豊かな道のみ)とハイキングコース
名越切通し、朝比奈切通し、大仏切通し、化粧坂切通し、天園ハイキングコース
5月の鎌倉、花木のフォトギャラリー
長谷寺、桜の季節にもう一つ楽しみにしているのがこの石楠花(シャクナゲ)。ツツジ科の常緑低木で本来深い山に自生しています。赤も鮮やかですが、白の石楠花は慎ましくて魅力的。
長谷寺弁天窟のあたりにある吉野躑蠋(ヨシノツツジ)。3月〜4月に咲き、桜とともに眺めることができます。
長谷寺山門近くの吉野躑蠋(ヨシノツツジ)。3月〜4月に咲き、桜や木瓜(ボケ)、万作(マンサク)と一緒に見られます。
長谷寺経蔵前の三葉躑蠋(ミツバツツジ)。3月〜4月に咲き、桜や木瓜(ボケ)、万作(マンサク)と一緒に見られます。
海蔵寺の三葉躑蠋(ミツバツツジ)。普通のツツジよりも早く咲き、海棠(カイドウ)が咲く頃には見頃です。
安養院の躑蠋(ツツジ)。門前だけでなく中にも咲いています。
仏行寺の躑蠋(ツツジ)。静かな笛田の山にある仏行寺は斜面一帯にツツジが咲く名所です。
安養院の躑蠋(ツツジ)。鎌倉におけるツツジの代名詞ともいえる安養院門前の風景。
海蔵寺梵鐘前のツツジ
鎌倉文学館の躑躅(ツツジ)。薔薇園の前に咲く、かなりの大木です。
鎌倉文学館の躑躅(ツツジ)。館の入口、新緑と大紫の鮮やかな色があいます。
浄妙寺の躑躅(ツツジ)。
浄妙寺の躑躅(ツツジ)。喜泉庵の入口あたり。
海蔵寺の著莪(シャガ)。門前にある底脱ノ井の傍らに咲いていました。
杉本寺の著莪(シャガ)。写真は本堂へと登る参道の途中、大倉弁財天の側にある弁天池のあたりに咲いていたものです。
鶴岡八幡宮、旗上弁財天の白藤(シロフジ)。
鶴岡八幡宮の藤。旗上弁財天の白藤(シロフジ)。
光則寺の藤。山門前に藤と白藤の藤棚があります。
別願寺の藤。
名越切通しの藤(フジ)。名越切通しの逗子側、大切岸から少し浄明寺方面に向かうと見えます。
神苑牡丹園。4月〜5月中旬、春の見頃を迎えた牡丹。印象深いのは雪化粧ですが、春の陽光とともに見るのもまた心地よいです。
神苑牡丹園。4月〜5月中旬、春の見頃を迎えた牡丹。印象深いのは雪化粧ですが、春の陽光とともに見るのもまた心地よいです。傘の花も映えます。
鶴岡八幡宮境内にある神苑牡丹園。元日から2月下旬が冬の見頃、春の見頃は4月〜5月中旬。
海蔵寺の山吹(ヤマブキ)。本堂左手、池と岩壁に挟まれた場所に咲いています。
海蔵寺の山吹(ヤマブキ)4月上旬〜5月まで鮮やかな山吹色の花が咲きます。
朝比奈切通しのウツギ(空木/卯木)。初夏の爽やかな緑に白い花弁が映えます。
海蔵寺門前の参道に流れる小川のウツギ(空木/卯木)。
海蔵寺の杜若(カキツバタ)。写真は園芸用の白杜若。
光触寺の杜若(カキツバタ)。静けさがグンと増す十二所にある光触寺。水を好む杜若が池に咲きます。
長谷寺の葉蘇(アカンサス)。舶来の雰囲気があります。5月下旬〜6月中旬に咲きます。
春と秋には庭内の薔薇園も大きな楽しみ。この景色に本物の洋館に薔薇。完璧です。
鎌倉文学館の薔薇(バラ)。
瑞泉寺のあじさい。あじさいと同時期に見られる金糸梅(キンシバイ)。あじさいに黄色はありませんから、目立ちます。
古道とハイキングコースのフォトギャラリー
※写真キャプションの地図番号は詳細ページの地図に対応したものです。
中程にある名越切通しがもっとも狭隘になる場所、第一切通し。1.5m程しかなく、すれ違えないくらい狭いです。かつては3mほどあり、地震などにより徐々に狭くなったようです。
日蓮聖人が松葉ヶ谷法の草庵を焼き討ちされた際、鎌倉の松葉ヶ谷(現在の鎌倉市大町、安国論寺付近)から法性寺(現在の逗子市久木)まで避難したそうです。それが石に書かれています。
巨石が切通しの雰囲気を作ります。左手は台地、右手は法性寺方面。まっすぐ進むと大町方面です。
逗子の法性寺口を入り、大町方面ではなく右に進むと大切岸の上を歩けます。ちょっと迫力あります。
こちらも大町方面への道。
まんだら堂やぐら群。中世のやぐらが無数に集まります。火葬や墓所として使用されていました。平成13、14年度の逗子市による発掘調査により鎌倉時代の後半、13世紀末頃から平場の造成とやぐらの掘削が行われ、室町時代中期まで供養などが行われていたことがわかっています。現在は閉鎖されており時期により臨時公開されます。
随所に案内板があり、散策者を助けてくれます。
大切岸。防衛のためとも採石場ともいわれます。三方を山に囲まれ、鎌倉城ともいわれた要害の地を象徴する史跡です。
パノラマ台からの風景。由比ガ浜、稲村ケ崎、江之島を真っすぐにみます。
朝比奈切通し。熊野神社前のこの切り立った崖は切通しらしい風景。
朝比奈切通し。鎌倉市と横浜市の境あたりにある崖には仏様が掘られています。
朝比奈切通し。おそらく江戸時代あたりに設置されたであろう石像。道中の安全を祈ります。
きれいな水、水によって長い時間をかけて削られた岩肌が人を落ち着かせます。
鎌倉らしさを実感できる熊野神社入口。熊野神社については別ページにて紹介します。
媒体などで大仏切通しとして写真が掲載されるのはほとんどここです。
この辺りからいかにも切通しらしく岩肌が見えてきます。
看板の左手には火の見下やぐらがあります。
大仏切通し。火の見下のやぐら。
化粧坂切通し。短いながらも風情があります。2013年に崖崩れがあり心配されましたが、すぐに復旧されました。
〔地図⑤〕山道に入ると空気もぐっと清々しくなります。
〔地図⑫〕大平山頂上を過ぎるとすぐ古道の風情が戻ってきます。
正面の岩肌を登ると大平山の頂上です。
〔地図⑯〕百八やぐら群。山を囲むようにやぐらが掘られ、最大7段にもなります。鬼気迫る霊場です。
〔地図⑭〕コース中最も迫力のある切通し。
〔地図⑱〕まさに鎌倉の中心を一望です。
〔地図⑮〕覚園寺方面へと分かれる道標。ここから建長寺までは約2kmです。覚園寺までは約1.2km、瑞泉寺までは約3.1km。
〔地図⑥〕どんどんと山を登って行きます。